take Love 4
シャワーの前にシンを放り出したアスランは、すぐにバルブに手をかけ、パネルで温度を調節しはじめた。
「っ、て・・・」
「暴れるからだ」
さすがにプラント最高評議会議長の私室は、浴室も広い。
しかしアスランはシャワー以外を使う気はないらしく、シンの頭からざあっとあたたかな雨を降らせた。
「先、洗ってやる」
「いいですってば、うゎあっ！」
足首を掴まれ、思い切り広げられて悲鳴が上がる。
「ほんとに感じやすいな、お前」
その声に、シンは真っ赤になってうつむいた。
シンのそれは、アスランの痴態を余すところなく見物してしまったせいで、すっかり反応してしまっている。
しかしアスランは、それを横目に見ながらも無視して、自分が入っていたそこに、また指を突っ込み、押し広げた。
「っあ、やっ」
「我慢しろよ。中をきれいにしないと、腹壊すぞ」
そんなこと言われても、と、シンが目を白黒させているうちに、慣れた動きで中から掻き出したアスランは、すぐにそこから指を抜いてくれた。
しかし、シンのものは浴室に入った時よりも、更に大きくなってしまっている。
それを見て軽く笑い、アスランは何も言わず、シンの前に膝をついた。
そして、また、口を開ける。
「ってアスランさんっっ」
慌てるけれど、何度かイっているせいで、今度は少しだけ余裕があった。
絡み付いてくる舌、熱い頬の粘膜、強く弱く、締め付ける唇。
大好きなアスランの、唇。
それを感じて、やっぱり半パニックな頭の隅、シンはできた余裕で無駄なことを思った。
この人、すっごく、上手いんじゃないか？
経験がないから、そう感じるだけかも知れないけれど。
でも・・・っ。
シンの吐き出したものを喉に受けて、アスランはそれを、こくんと飲み干した。
・・・・少なくとも、慣れているのだけは、間違いない。
真っ赤になってうつむいてしまった少年の頭をぽんぽんと撫でて、アスランは棚に手を伸ばし、取り出したスポンジにボディーソープを泡立てた。
シンは下を向いたままだ。完全に息が上がっている。可愛い。
そういえば、こういうタイプはアスランの知る限り、ギルバートのまわりにはいなかったように思う。
気に入ったのなら、厄介だな。
恐らく、彼の好みは自分やレイのように大人しい生き物なのだろうが、目新しいものが良く見えるのが人の常だ。
「ほら、シン」
とりあえず洗ってやろうとスポンジでシンの背中をこすると、慌てたように顔を上げたシンは、アスランの腕に手を伸ばした。
「自分でしますってば！」
「いいから。その、汚したの、俺だからな」
アスランもちょっと赤くなりながら、シンの体を、洗う。
他人の体を洗ったのは初めてではないけれど、この体を自分のものにしたのだと思うと、少し、何かが違う。
何というのか・・・可愛い。
なんだか、大事にしたいと、思う。
これは、ハメられたかなぁと、アスランはひとりごちた。
体の繋がりなんて、たいしたものではないと思っていた。
いや、実際、確かにそうだったのだ。
しかし。
「やっぱり、初めてっていうのは、違うのかな」
そう呟いて、逃げようとするシンの脚をつかまえる。
確かに、自分も初めての相手は忘れていない。
いろいろあったから、それが体を繋げたせいなのかどうかは、いまいち判然としないのだけれど。
「っ、やっ、やめてくださいよっ」
「だから暴れるな・・・・俺だって、疲れてるんだ」
つかまえた脚を根元まで洗い、やっと開放したシンの上からシャワーをかける。
白い泡が溶けて、恨めしげな赤い瞳がよく見えた。
「頭は、いいよな」
その頭を撫で、今度は自分の始末にかかった。
シャワーをフックに掛け、床に膝を付いて後ろから手をまわす。
少し反った喉を、胸を。緩く開かれた脚を。
あたたかな水が、はらはらと滑り落ちて行く。
「っん・・・・」
アスランも、シンのことは言えない。
ただの後始末とわかっていても、押し開いたそこはひくひくと息づき、緩い快感を脳へと伝えて来るからだ。
とろりと中からこぼれ落ちる感覚に、ふるりと身を震わせる。
「っ・・・ふ・・・・」
それでも、もう三度もイかされているせいで、もう兆しはしなかった。しかしたまに、自分で慰める羽目に陥るから、今日はそうならずによかったと思う。
シンの前で自慰をするのは、ちょっと御免被りたい。
慣れた手つきで作業を終えると、アスランはそのまま、体を洗うためにスポンジを取ろうとした。
「ん？シン？」
先ほどの攻防で、最後にスポンジを取られたままだ。それを掴み締めたまま、シンは目を丸くして、アスランを見ている。
「・・・・お前、元気過ぎるぞ」
その腰の辺りに目を引かれ、アスランは思わず呟いた。
「あ、あんたがエロ過ぎんだよ！」
「いいからスポンジ貸してくれ。それは後でしてやるから」
少年の手からスポンジを取り上げ、ボディーソープを足して、手早く体を洗う。ざっと泡を流して振り向くと、そんな仕草にすら煽られたシンの前に、また座り込んだ。
「三回くらいイってないか？お前」
「だから、あんたが・・・・」
「他人のせいにするな。もう口じゃしてやらないぞ」
少しむくれたふうに言い、アスランはシンの体を反転させて、背中から抱き込んだ。力を失っているとはいえ、アスランのものが背中に当たり、少年はびくんと反応する。
そのアスランはほぼ無反応で、シンのそれにしなやかな指を絡めて扱きだした。
「っあ・・・・」
指、だけでも。
好きな人にされているのだ。悦くないわけがない。
しかも、背中にぴたりと張り付いた、彼の胸。
「気持ち、いいか？」
そんなことを、甘くかすれた声で囁かれて。
四度目は、さっきよりも我慢がきかなかった。
ぽうっとした頭と、汚してしまった下肢とに、ざあっとシャワーをかけられて、シンはやっと我に返る。
「そろそろ立てるか？」
「あ、は、はい」
膝も腰もがくがくだ。はっきり言って、アスランを受け入れた場所も痛い。
しかし、なんとか意地で立って、自力で浴室を出たシンの頭を撫で、アスランは偉いと笑って見せた。いつもなら確実に腹を立てているところだが、なんだかちょっと嬉しくなるから不思議だ。
「服、持ってきてやるから。待ってろ」
そう言われて頷くと、頭からタオルを掛けられた。
その上から撫でられて、もっと嬉しくなるのは、もうあんまり不思議ではなかった。
アスランが部屋へ戻ると、ギルバートはソファに沈み、氷の浮いたグラスを傾けていた。
きついアルコールの匂いが鼻先を掠める。
散らばった軍服を拾い集め、彼の邪魔をしないように無言で戻ろうとしたアスランの背に、ギルバートの声がかかった。
「可愛いね、彼は」
「そ、そうですね」
厄介・・・というよりも。
かわいそう、だよなぁ。
背中を見せているから、泳いだ目は見られていない、けれど。
アスランは、足早に浴室に向かった。
その、しなやかな背中を目を細めて見送り、ギルバートはくすりと笑う。
「まあ、君のこういう可愛らしさの方が、私は好きだがね」
もちろん、その呟きはアスランの耳には入っていない。
そうして軍服の着付けまでアスランにされて、いつも止めない襟のカラーまで止められると、シンは多少マシになった足腰を、半ば無理やり立たされて脱衣場から引きずり出された。
「では。議長」
今までのことなど、まるでなかったかのような様子で、アスランはギルバートの前に立った。
片手では、シンの体を支えたままで。
「失礼します」
「ああ」
ギルバートは、その様子を実に微笑ましそうに眺めている。
「ちゃんと、部屋まで送ってあげるのだよ、アスラン」
「はい」
背筋を伸ばしてきちんと敬礼したアスランの横で、シンはかろうじて敬礼の形だけを取った。そのシンを、青年はずるずると引きずって部屋を出る。
「アスランさん、痛い・・・」
「いいから歩けよ。向こうにベンチがあったから、そこまで我慢しろ」
「なら議長のとこで休めばよかったじゃないですか・・・」
恨めしげなシンに、アスランは深くため息をついた。
「お前、あのままあそこにいたら、今度は議長にされてたぞ」
「え」
今になってやっと、その可能性に思い至ったのだろう。シンは絶句して、全体重をアスランにかけた。
「議長としたいなら、今からでも戻っても・・・・っ、シン、重い。自分で歩け」
「なんか・・・俺、今日いろんなこと知っちゃった気がするんですけど」
「何を今更。・・・・ぁ」
ちゃんと部屋まで送れ、と、ギルバートは言った。
部屋まで送れば、レイがいる。
ギルバートに対しては、アスランにとって「先輩」にあたる、レイが。
今日知ったどんなことよりも、シンはそれを知りたくないだろうなぁと思い、しかしこのまま連れ帰れば、レイのことだ。何も気にせず、それを口にするかもしれない。
『なんだ、お前もか』と。
この先にあった談話スペースで、休ませて。それから自分の部屋に連れて帰るしかないなと、アスランは観念する。
更に情が移る予感に、また、大きなため息がもれた。